「動機付け」というのは、子どもたちの学習に対する意欲や関心を高め、持続するという意味です。
子どもを見ていると、勉強ができるようになりたい、知らないことを知りたいという欲求に満ち溢れているように感じます。
その気持ちを大事にして、さらに伸ばしていくということを心に留めておきましょう。
では、上手く動機付けするために、どのような手法が考えられるでしょうか。
授業の初めにびっくりするような出来事を作り上げ、興味をもたせるという方法も場合によっては必要です。
しかし、毎回の授業で、花火を打ち上げたりビックリ箱を開けたりするようなワクワク・ドキドキする仕掛けを準備するのは不可能です。
以前申し上げたように、教師が子どもと世界の仲介者であるということを伝えていけるような、質の高い授業を目指していくことが最も大切だと思います。
そういったことができるようになっていけば、知能的に高い水準にある子どもにも満足感を与えることができます。
具体的な例をお話しします。
以前、とても学習能力の高い子どもを担任したことがありました。
何でもよくできるし、特に算数の難問を解く力が高く、クラスの子どもたちからも一目置かれていました。
私が教えることを、既に全て知っている子どもを相手に授業をすることに、緊張を覚えることも度々ありました。
でも、経験を生かして、体験を数多く取り入れたり、課題の選択の幅を大きくしたりするような授業の流れを考えました。
その子どもが卒業のときに、「先生の授業は面白かった」と伝えてくれたことにほっとしました。
彼らとの授業で思い出に残るのは、国語の授業を子どもたちがグループで行うという思い切った実践をしたことです。
音読、課題の確認、自力解決、シェアリングといった単純な流れを、私が繰り返し行った後でやらせてみたのです。
当初は、「先生のやっていることは簡単だ」と思っていた子どもたちも、実際に授業をした後には、「先生が、何気なくやっていることは、すごいと思った」という感想に変化しました。
こういった授業は、学習能力の差に関係なく、子どもたちが興味をもちます。
誰もが、「やってみたい」、「面白かった」と思える授業を展開するのは難しいですが、工夫次第かもしれません。
もちろん、授業の質を高めることは一朝一夕にできることではないし、経験が物を言うこともあります。
でも、若い先生だから不可能だということはありません。
専門知識をひけらかすようなやり方はいいとは思えませんが、自分なりのやり方を見つける努力を続けていってほしいと思います。