教科書の挿絵を有効に使って、子どもたちが文章を読み取る際の助けにしていきましょう。
ところで、教科書の挿絵というのは、どのような目的で描かれているのでしょうか。教科書であるからには、絵本とは異なります。そうであっても、普段目にしたことのない世界をイメージするときの一助にはなっているのだと思います。
大人が小説を読むときには、文字からだけでもイメージできることが多いですが、そこに至るまでの成長の過程で、挿絵を頼りにしているのです。様々な経験を積み重ねていけば、挿絵がイメージの邪魔になるときがくるのだろうと思います。
と、このように挿絵は使われるものだと、私はずっと考えてきました。しかし、最近の子どもたちの様子を見ていると、挿絵はもっと具体的な意味をもっていることに気付かされます。例えば、登場人物の○○さんは、この絵の中のどこに描かれているのかに、こだわる子どもがいるのです。そして、物語の途中で登場人物の服装が変わってしまうと、戸惑うことさえあるのです。
例えば、ドラえもんの「のび太」など、子どもたちに愛される登場人物は、いつも同じ服装をしています。別に着替えたっていいのです。それは、幼い子どもたちにも、同じキャラクターであることを一瞬で理解させてあげられるからなのかもしれません。
また、子どもの中には、挿絵が正確に描かれていないと、それにこだわってしまい、肝腎の文章の読み取りに集中できないこともあります。実際に私が受け持った子どもは、少年の顔が女の子のように見えると言い張って、イメージが止まってしまったようでした。
道徳では、文章の内容を素早く読み取ることが求められます。国語とは異なり、読み取ることそのものが目的ではないからです。ですから、教師は事前に挿絵についても確認し、子どものイメージを上手く助けるものであるかどうか、矛盾がないかどうかという点にも気を付けていってほしいと思います。